貴方はとある進学校に通う男子学生。決してクラスで目立つ存在ではなく、クラスカーストは低めでいわゆる陰キャに分類されるどこにでもいる学生。そんな貴方にもアイデンティ…自己の居場所を確保するものがある。 頭脳だ。1年生ながら将棋部員で団体戦の先鋒を任されており、個人戦では県ベスト4の実力者。もちろん勉学は優秀。上には上にはいるのは確かだが少なくともクラスでけたたましく騒ぎ立てる頭の軽そうな連中より賢いことを自負し、内心優越に浸りながら概ね穏やかな学校生活を過ごしていた。 …概ねといったのには訳がある。貴方には一つ気に入らないことがあった。それはクラスの中で自分が二番目に成績がよいことだ。別に一番になれないのが悔しいのではない。一番になっているその人物が気に入らなかった。 「天峰 未希」 それが貴方の平穏を乱す邪魔者の名だ。彼女、いやあいつがこのクラスの一番にいるのが癪だった。なぜなら、あいつは貴方が最も内心見下していた人種…一言で言えば頭の軽そうな女だからだ。遅刻欠席居眠りサボりは日常。休み時間になれば姦しく喋り男に色目を使ういわゆるギャル、誤解を恐れずにいえばビッチであり、そんなバカも同然の存在に自分が負けているなど認めたくなかった。 どうせ、不正をしている──。 真剣な頭脳戦をすれば自分が負けるはずがないと信じ込むことで自分を保っていた。その自分の優位が証明される勝負の機会は驚くほど突然にあっけなく訪れた。 「君、未希の宿題代わりにやってくれない?」 とある休み時間、女はへらへらしながらそう持ちかけてきた。なんと軽率。バカ丸出し。浅はかな頼みであろうか?ただただ呆れる。こんなのが自分より出来ががいいなどと認めたくなかった。だから冷たくあしらってやった。 するとバカは机に身を乗り出し接近してきた。着崩しはだけた制服から肌が露出している。柑橘系の香りが鼻をこそばゆく刺激する。こうやって普段から男をたぶらかしているのだろう。そんなことはお構いなしに続けてバカは提案してきた。 「君の得意な将棋で負けたら未希を好きにしていいよ♥でも未希が勝ったら君は宿題奴隷になってもらうね♥」 バカバカしい…いかにも頭の軽そうなバカが無い知恵絞って考えた提案だ。 ──だが悪くない…むしろ願ってもない機会だ。どっちが頭脳で上か思い知らせてやるっ!! …っというわけで♪ 頭の悪い陰キャで童貞の君は目の敵にしていた未希ちゃんと自分の誇りでもある将棋で対戦することになりましたーっと♪いぇい♪ぜーんぶの未希ちゃんの計画どおりー♪ここからもぜーんぶ未希ちゃんの計算どーり♪ ほんっとバカだよねー♥君って♪だからバカでも分かるレベルで教えてあげるね♥どっちが上か♥誰が支配者か♥そして君が未希に負けるのだ~いすきなバカマゾだってこと♥よろしくね♥
未希ちゃんは僕にとってとっても大事な女の子です。なぜかといえば、僕が一作目の前から考えていた女の子であることと、僕の好きなキャラや好きな人を織り交ぜて形成されているからです。だから正直にいうと自分が書いている中で未希ちゃんが一番好きです。この作品を書いたときもこれ以後の未希ちゃんの作品を書くときもそうなのですが未希ちゃんは勝手に動きます。しかし無秩序に動くのではなくこちらの要望を聞き入れた上で未希ちゃんらしい、より完成度の高いアウフヘーベンされた形で返答してくれます。この作品に分岐があるのはそうした理由です。そうして未希ちゃんに提案された2つの可能性がどちらも捨てがたくどっちも未希ちゃんらしさたっぷりだったので両方いれました。どっちが好きでしたか?あるいはどっちがより貴方の望む未希ちゃんでしたか?
将棋にしたのは、頭脳で負かされたいって思ったときに音声作品に適してなおかつ頭脳が物を言うというのが明白なゲームだったからです。ちなみにこの作品のタイトルは将棋がゲーム理論では完全情報ゲーム(Game with perfect infomation)と呼ばれていることに由来しています。各章の一部にはそれ関連の単語も入れてあります。
それ以外にも色々要素を入れてたと思いますがよく覚えてません。ですが、先述の通り未希ちゃんには様々な意匠を込めてありそれは今なお頭に入っております。それが分かった方はニヤっとしていただけると嬉しいです。
さてこんな個人的な思い入れの塊の作品にもかかわらず、素晴らしい方々によって形づくっていただいたと常々思っております。天知さんを選んだのは誰が聞いても可愛いって思える声でなおかつ癖がなく、演技の幅も広いのでころころ変わる未希ちゃんの表情もしっかり表現してくださると思い依頼しました。もう天知さん以外に未希ちゃんは考えられないであります。そしてイラストを描いてくださった浦島さんのイラストもう大好きです。JKの魅力を存分に利用しながら自分の勝利を確信するイタズラな表情ほんと好きです。シュシュとかもう僕一切注文してないんですけどもうイメージぴったりで次回作で使わせていただきました。ありがとうございます。
総括しますと、未希ちゃんは僕の大好きを詰め込んでる作品でこれからも大好きを詰め込みたい作品なので、もし未希ちゃんに魅了されていただけたのでいればその背中を後押ししていただけるとありがたいです。